
私たちがこれまでに取り組んだ事例のご紹介です。
目的
- 生産部門の社員が自分の成長とやりがいを感じられる仕組みづくり
- あたらしい指導方法を考える
- 技術継承の仕組みをつくる
背景
大手食品メーカーB社は幅広い商品の生産をしています。生産現場では社員が複雑な生産管理と高度な品質管理に日々取り組んでいます。同社にとってとても重要な部門なのですが、現場では自分の成長ややりがいをいまひとつ感じられないといった社員の悩みや高年齢化による技術継承の課題などを抱えています。エンゲージメント向上のご相談です。
実施内容
まずは、人材開発部門、生産部門、現場である各工場長に私たちが加わりプロジェクトチームを編成しました。そして自分たちの理想のかたちを考えることから始めます。いま起きている問題の解決から始めないことがポイントのひとつです。それでは現状の改善には繋がりますが、視野が広がらず根本的な解決には届かないからです。その後、現場となっている全ての工場を訪問し、各階層の社員の方と対話をくりかえし、実際に生産現場を見ることで現状を把握していきました。
生産現場では生産目標の達成や改善の成否についての評価は行われていましたが、それだけでは個人個人が自分自身の成長についての実感を得るには十分ではなく、やりがいの低下につながっていました。とくにベテラン社員に特徴が見られました。長年の経験に裏付けられた高い技術をお持ちなのですが、役職には限りがあるため職位としては中堅や若手と変わらず、モチベーションが下がってしまっているようでした。他にも部下・後輩の育成や高年齢化による技術継承の悩みもあがりました。これらの悩みは根っこの部分ではつながっていそうです。部下や後輩の指導は行っているが、個人としての成長を感じられる機会がたりず、それがやりがいの低下に繋がっていることが見えてきました。
このケースでは自分の成長を実感できる仕組みをどう作るかを軸に考えていきました。現場社員は日々の仕事に追われる中でなかなか自分自身を振り返る時間を持てずにいました。また評価が目標達成の成否に置かれていたため、そこに至るまでのプロセスや失敗から学ぶ(経験学習、内省の)視点が不足していました。成否に関わらず、そこに至るまでの試行錯誤を成長の機会と捉えることができれば育成する側も指導の幅が広がります。またベテランのモチベーションを高めることで積極的な後進の指導につながり、それが技術の継承につながっていきます。
新しい能力開発プログラムには、「経験学習と内省の時間をつくること」、「そこからの学びを促す指導者の育成」を取り入れました。また役職とは別に、経験や技能に応じた新しい呼称をもうけることになりました。